糖尿病患者、心の病リスク3倍 厳しい自己管理で重圧2005年09月05日 07:18

 糖尿病にかかっている人は、かかっていない人に比べ、うつ病や神経症など心の病になっている割合が約3倍高いことがわかった。東京医科歯科大の有馬秀晃医師(医療管理学)が 神戸市で開かれた世界心身医学会で8月25日発表した。
 有馬さんらは、ある企業の健康保険組合員から有病率を調べた。
 その結果、生活習慣病の2型糖尿病患者は195人いたが、うち心の病がある人は10.3%(6348人中20人)に上り、糖尿病にかかっていない人で心の病がある割合(6348人中214人、3.4%)に比べ、約3倍高かった。うつ病に限定しても、糖尿病患者の有病率は2.6%(5人)あり、糖尿病でない人の1.2%(78人)に比べて2倍以上高かった。
 うつ病を合併するのが多い理由として、食事療法やインスリン自己注射など日常生活において厳しい自己管理が求められ、ストレスがかかることや、病気の悪化による失明や腎障害への不安などが指摘されている。
 有馬さんは「糖尿病になった場合、病気の治療だけでなく、心のケアも同時に行うことが大切だ」と話している。 (朝日新聞、2005年08月25日夕刊)

 がんになると、うつ病を併発することがあるということは、広く知られているが、糖尿病の患者も、うつ病になる人が、そうでない人に比べて多いことがわかったわけである。うつ病になると、自殺することがあるので、軽く考えてはいけない。糖尿病→うつ病→自殺のコースがある。
 人生上の出来事をきっかけとして、うつ病になることが多いが、それは、その出来事をきっかけとしてあらわになった自分、または自分の環境、条件、自分と関係する他者を否定する、嫌悪する思考を繰り返すことによって、うつ病を起こす。
 有馬医師が、「病気の治療だけでなく、心のケアも同時に行うことが大切だ」と語っておられるというのだが、そのケアの手法の一つに、認知行動療法がある。
 病気を含めて、新しい自分、新しい自分の環境、状況、自分と関係する他者を再評価し、新しい自己(および自己の環境、他者)を受け容れて、否定・嫌悪しなくても生きていけるように、認知(人生観や自己観)を変えて、うつ病を克服していくような心理療法、カウンセリング技法である。
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 私たちは、宗教色のない腹式呼吸法や自己洞察法(坐禅に似ている)を織り込んだ認知行動療法を推進しているが、糖尿病のかたの心のケアにもこれを推薦したい。指導者(医療関係者)にも、患者にも、理解し、実践しやすいカウンセリング技法である。