過呼吸「若者に増加」2005年11月12日 22:50

  「AERA」に「「過呼吸」の先にある危機」という記事がある。(週刊誌「AERA」05年11月14日、朝日新聞社)

 最近、若者に「過呼吸(過喚起症候群)」がふえているという。人気アイドルの堂本剛さんも、その経験者だという。呼吸が極端の早くなり、酸素のとりすぎになる。手足のしびれ、失神を起こすこともある。対症的な処理は、紙袋に自分の息をはきだし、それを吸うとおさまってくる。
 ただし、軽くみてはいけない。過呼吸を起こす人は、ストレスへの脆弱性があるので、パニック障害に発展する場合がある。パニック障害が治りにくく、うつ病を併発することも多い。過呼吸の段階で、ストレスの原因を探り、ストレス対処法を身につけたほうがいい。
 パニック障害も、薬物療法で治らない人が多いのですから、不登校やニートになった方にも、これによる場合があります。パニック障害は、一般の認知療法や、私どもの自己洞察瞑想法を中心とする認知行動療法で、治る人がおられます。

ニート(5)対人恐怖2005年07月23日 06:45

ニート(5)対人恐怖による

 ニートの中には、対人恐怖によるものも多いだろう。
 対人恐怖という障害がある。一人でいる時は、何もないが、人と接触する場面で、不安、恐怖が起きる。対人恐怖には次のタイプがあるが、重症になると、他者の視線が怖くて小人数の職場にいたたまれなくなって、仕事を継続できないとか、一度、これで退職すると、また同じようなことになることをおそれて就職活動をしなくなる。
  • (A)赤面恐怖=(人前で食事できない、会議などで発言できないなどの症状を伴う人もいる)
  • (B)表情恐怖=(表情恐怖、態度恐怖など、面目つぶれの恐怖)
  • (C)視線恐怖=(他人の視線による被害意識、自分の視線で他者を傷つけた加害意識、罪の意識、自己嫌悪の意識、など)

その他

 このほかに、就職できなくなっている中で、不安障害のうちには、パニック障害、広場恐怖(電車に乗れない、など)、PTSD(外傷後ストレス障害)などがある。
 対人恐怖ではないが、対人コミュニケーションをうまくとれない人もいるが、そのことから就職を断念する人もいるだろう。
 こういう心の病気になって、これを治す医者やカウンセラーが近所にいなくて、なかなか治らず、ニートとなることを余儀なくされている人も多いだろう。

 厚生労働省が22日発表した04年の雇用情勢を分析した「05年版労働経済白書」によれば、仕事も通学もせず職業訓練も受けていない「ニート」に相当する若年無業者は64万人、フリーターは過去最高だった前年に比べて4万人少ない213万人と推計した。

集団で過換気症候群発症2005年06月17日 08:14

 めずらしい事件が報道された。6月初め、大阪府の追手門学院高校の生徒410人が修学旅行した際、29人が過換気の症状を訴え、うち、10人弱にいまも症状が残っている。一部の生徒がルール違反をしたため、旅先で学年集会を開いたところ、その場で多くの生徒が発症したという。保護者からは「生徒指導によるストレスがきっかけ」という見方が出ている。(朝日新聞、6月17日)

 過換気症候群はパニック発作と似た症状がおきる。 過換気症候群は、強い呼吸困難、めまい、四肢のしびれ感、振戦、胸痛、動悸、口渇、パニック状態あるいは意識障害が起きる。通常は身体に異常な所見がなくて、不安、緊張、抑うつなど心因性に起きるものを指す。

 パニック発作は、次の症状のうち4つ以上が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する。13の症状のうち4つ以上が認められると「パニック発作」である。
  • (1)動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  • (2)発汗
  • (3)身震いまたは震え
  • (4)息切れ感または息苦しさ
  • (5)窒息感
  • (6)胸痛または胸不快感
  • (7)嘔気または腹部の不快感
  • (8)めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • (9)現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている)
  • (10)コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
  • (11)死ぬことに対する恐怖
  • (12)異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • (13)冷感または熱感(紅潮)
 太字が、過換気とパニック発作に共通であり、2つは、似た病気である。青斑核セロトニン神経が大きく関与しているらしい。
 このような発作が、繰り返し起こるようになると、外出するのをためらうようになり「パニック障害」になる。

 この報道のように、一度に大勢が、過換気を発症するのは、現在の若い人のストレスに対する弱さ(運動不足で、セロトニン神経が弱体化)が拡大していること、旅行による疲れの蓄積、その学年集会での指導がストレスになった、などの要因が重なったのだろう。大部分の生徒が発症したのではないから、先生の指導だけに責任を負わせることはできない(生徒のセロトニン神経の弱体化、疲れたのはその生徒の個人行動=ルール違反か=もありうる、など)だろうが、指導のストレスも、一つの要因ではあったかもしれない。心の病気は、小さい頃からの育てられ方、家庭環境、運動不足、本人の選択した生き方、など種々の要因も背景となる。
 学校の教師は、こういう心の病気の発症の仕組みも理解しておく必要がある。心の病気の予防的なカウンセリングの学習である。小中生の不登校のきっかけが、先生の言葉、指導からであったというのが多い。
 セロトニン神経は、感情や衝動を抑制する神経であるので、セロトニン神経が弱体化すると、うつ病、パニック障害、対人恐怖などの心の病気になりやすい。また、感情、欲望を抑制できず、家庭での虐待・暴力、種々の組織での差別、いじめ、セクハラ、悪質なビジネス行動、などをする。大人のうつ・自殺が多いのも、悪質な人から誠実な人が追い込まれるという仕組みや、セロトニン神経が弱体化するような生活をしているのも、その背景にある。
 あるいは、子供の場合、感情を抑制できず、「キレ」やすい。感情を処理できずに、過食、リストカット、自殺未遂のくりかえし、薬物依存、他者へのいじめ、非行・犯罪などに向かうこともある。
 そのような重要な役割をはたすセロトニン神経を活性化する(予防と治療の両面に効果がある)には、坐禅に用いられる腹式呼吸法、散歩、ジョギング、などのリズム運動を毎日実践するのがよいとされる(有田秀穂氏(東邦大学教授)『セロトニン欠乏脳』NHK出版)。
 子供も大人も、このようなことを実践されることをおすすめしたい。